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<47>曖昧なHSP/HSC

2022年3月9日
曖昧な概念、どう向き合う?

曖昧な概念、どう向き合う?

生活に支障なら診断を

 Q 最近、HSPやHSCという言葉をよく聞くようになりました。神経質な特性は発達障害でもあると思いますが、両者は関連したり重なったりするものなのでしょうか。

 A HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)あるいはHSC(ハイリー・センシティブ・チャイルド)という言葉は、数年前からメディアでもよく取り上げられるようになりました。アメリカの心理学者が1990年代に提唱した概念で、生まれつき敏感な人を指すとされています。人の気持ちに敏感、ささいなことで思い悩む、周囲の人の期待に応えようと頑張りすぎる、などの特徴が挙げられ、そのために一般の人よりも疲れやすいとされています。
 気をつけなければならないのは、これが医学的な診断概念ではないことです。この概念を提唱した心理学者自身の著作を見ても、定義は曖昧です。現在の精神医学では、生まれつきの精神的な特徴は発達障害の特性かパーソナリティーのどちらかでしか説明されていないのですが、HSP/HSCはそのどちらでもないと強調されます。しかし、その根拠は示されていません。
 HSP/HSCの特徴とされる記述の内容は、発達障害、中でも自閉スペクトラム症と重なる部分が大きいと考えられます。HSP/HSCを提唱した心理学者自身は「自閉スペクトラム症とは異なる」と述べていますが、前述のようにその異同を検証しようがありません。
 たとえて言えば「熱っぽい」という状態を新型コロナウイルス感染症と比較するようなものです。「体温が何度以上を発熱とする」といった定義をせずに「熱っぽいと感じる」とだけ述べても、それ以上に検討のしようがありません。熱っぽく感じても、検温したら平熱の範囲内のこともあります。検温したら高熱だったとしても、新型コロナウイルス感染症とは限りません。また、新型コロナウイルスに感染したからといって、必ず発熱するわけではありません。HSP/HSCと自閉スペクトラム症などの診断概念の比較でも、同様のことが言えます。
 HSP/HSCは、自分あるいはわが子の敏感さに注目するのにはわかりやすい言葉です。「共感性が高い」「内面が豊か」など、障害とは異なるポジティブな側面が強調されるため、心情的に受け入れやすいかもしれません。しかし、もし生活に支障があるのであれば、発達障害を含めた何らかの診断に該当する可能性があります。定義の曖昧な言葉にしがみつくよりも、福祉サービスの利用につながる診断を受けることの方がメリットがあると思われます。
 (本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)

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