えんぴつを握り原稿用紙に向かう。頭の中を行き交う言葉を一つ一つ文字にしてゆく芯の先っちょを見ながら、誰に習ったわけでもないのに、いつの間にか作法知らずの文章を書き記すことに何とはなしに慣れ親しんでしまっていることに驚きながら、ついさっきまで書こうとしていたことを紙の上に引っ張り降ろさないと行き方知らずの原稿になるぞ、などと自分を正すつもりの言葉をつぶやきつつ、何を書こうとしていたのか昨夜床につくまでの時間を頭の中でたどっているのだ...
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