家の裏の斜面で、白い百合の花が緑を突き破るようにして咲いている。蕾のときから白い姿が際立ち、数日前から一つ二つと数えながら開花を楽しみにしていた。本稿のためのえんぴつを歩かせる前の準備、深呼吸とでも言おうか、二階北側の窓から裏の緑をのぞく。子供の頃から見慣れているあの山の百合。僕は好きだ。たしか一年に一輪ずつ花を増やしてゆくらしい、一輪の百合が多いところを見ると今年初めて花を咲かせた百合が殆どだ。中に一本だけ...
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