僕の手に握られた一本のえんぴつ、芯の先端が原稿用紙の枡目を埋めてゆく、言葉が綴られてゆく、ほら、もう三行が文字で埋まった。頭の中では、行きつ戻りつ、現れては消え、決まりそうで決まらない、腹の中がムズムズするような、文字にするような意味も感じない言葉が氾濫している。一体全体、何を書こうとしていたのか、散乱しかけている言葉。音声ではなく文字になる言葉、近くに誰も居ないのに言葉が文字になって現れてくる、相手は誰なのか! これは手紙、いや、伝えるべき情報も定まらないのに、でも手紙? 特定の相手も居ない見えないのに、そうか投函されない手紙という言い方もアッタ!...
このページは有料会員限定です。紙面併読コースまたは電子版単独コースに登録することで続きをご覧いただけます。